キャッスルマン病の名前の由来は、アメリカ東部では最大であり最古の病院であるマサチューセッツ州ボストンにある総合病院マサチューセッツ総合病院の病理医である「キャッスルマン氏(Castleman)」が、当時はまだ解明されていなかった難病であるこの病気について1956年に初めて具体的な症例をもとにした論文を発表したことから、医師の名前を元に病名がつけられたのがキャッスルマン病の名前の由来とされています。
1956年にキャッスルマンによって発表された論文では、13症例についてその実態と症状が報告されています。
ここでは、未だ発症事例が少なく日本の患者数も2000人に満たないとされる難病のひとつであるキャッスルマン病の病態についてまとめております。
尚、キャッスルマン病はアクテムラの登場により治療における新しいステージが見えてきた分野ではありますが、まだ明確な治療法が確立されているわけではありません。
キャッスルマン病はまだ医学的に研究段階にある疾患なんだぁ。病態がよくわからないと診断も難しいんだろうな。
そうだね、キャッスルマン病の病理・病態はまだ症例が少ないこともあって完全に解明されてはいないんだよ。実際に医学で病気の正確な解明がなされているものはまだまだ少ないのが現状なんだ。
そうなんだぁ。じゃあ、まだ解明されていない病気はどのように診断していくの?
正確な診断、100%正しい診断はおそらくまだ出来ないというのが正しい答えかもしれない。しかし、この病気を世の中に医学論文で発表したキャッスルマン氏は代表的な症例を残している。
医学の世界ではこのような統計的なデータ、症例を元に可能性を検討していくんだよ。
尚、キャッスルマン病の症状の中でも最大の特徴と言えるものに「リンパ節腫脹」が確認される点があげられている。
※最大の症状の特徴はリンパ節腫脹が確認される点
キャッスルマン病の初期症状として確認されている代表的な症状は貧血症状が最も多い自覚症状。
この他にも症状の特徴として多いものとしては「血小板の増加及び減少」「アルブミン値の低下」「肝機能値の異常」などの症状が確認されている。
また次項で解説する「多中心型キャッスルマン病」では、自覚症状として
・発熱症状
・倦怠感
・皮疹
・肝脾腫
・腹水・胸水
・浮腫(ふしゅ)
・咳嗽
・食欲不振症状
・体重減少症状
などの自覚症状を感じやすいことも確認されているんだ。
キャッスルマン病の症状の中でも最大のと特徴とも言えるリンパ節腫脹とは、その名の通り全身に張り巡らされているリンパ節が腫れてしまう症状を指す。
リンパ節という言葉は耳にしたことがあるよね。このリンパ節は全身に張り巡らされるように点在し、中でも「耳の下部」「頚部」「下肢の付け根部分」「腋の下」などに多く存在しているんだ。
その為、キャッスルマン病の初見では、まずこのリンパ節腫脹の有無を確認していくことになるんだよ。
リンパ節って確かに何度か聞いたことがあるよ。ねぇドクター。リンパ節はどんな役割があるの?
リンパ節は、免疫器官のひとつで数ミリに満たないサイズの組織。大きさは様々で約2ミリ~30ミリ程度のリンパ節まである。
※リンパ節の大きさは約2ミリ~30ミリ程度
リンパ節からはリンパ管が枝分かれしていて、病原菌やウイルスなどの異物が体内に侵入してくるとリンパ節は異物の流入を食い止めるために戦うんだよ。
リンパ節が腫れるケースでは、この戦いの時に発する熱などによって「炎症」を発症することで腫れあがる。
キャッスルマン病の患者は、ほぼ全ての症例でこの「リンパ節腫脹」が確認されている為、代表的な症状のひとつとされているんだ。
キャッスルマン病の病態としてはリンパ節が腫れる症状を発症する。ということはキャッスルマン病は免疫細胞が活動しているってことなのかなぁ。
そうだね。免疫細胞が働いて炎症を発症するのは正常な生体反応のひとつ。細菌やウイルスが進入してきたら免疫細胞が反応して体内から駆除しようと働く。
でもウイルスや細菌感染をしているわけでもなさそうなのに免疫細胞が反応しているのはなぜなの?
ポンちゃん、良いところに気がついたね。実はこの免疫細胞が働いていしまう理由がキャッスルマン病を難病と位置づけている理由でもあるんだ。
キャッスルマン病の患者はリンパ節が腫れ上がるリンパ節腫脹と呼ばれる病態を確認する。このリンパ節からは、インターロイキン(IL-6)と呼ばれるサイトカイン物質が大量に放出されているんだ。
このIL-6はマクロファージと呼ばれる白血球を刺激して急性反応を誘導する物質のひとつ。
そして問題なのは、この「IL-6サイトカイン物質」と「たんぱく質細胞」が結びついて新しい免疫細胞を生み出すことにある。
新しい免疫細胞?
そう、この免疫細胞は元々体内に存在していない全く新しい免疫細胞。そしてこの免疫細胞は細菌やウイルスの進入などに反応するのではなく、正常で元気な細胞に攻撃をしかけてしまうことが最大の問題点なんだよ。
正常な細胞を攻撃してしまうの?
まだ日本での症例も少ないことからどうしてこのように働くのかはわからない部分も多い。また、このように何らかの免疫細胞のトラブルで自分自身の体を傷つけてしまう病気も実はまだまだ多くあるんだよ。今言えることはキャッスルマン病は正常な細胞を破壊していく病態をもつ病気ということなんだ。
元気な細胞を攻撃してしまうキャッスルマン病は免疫細胞がどのように働いているかをチェックする必要がありそう。
リンパ節腫脹の存在が確認された場合は、その発症部位について注目する。これはキャッスルマン病の病態を検討するにあたっては、この「リンパ節腫脹」の腫れる部位によって大きく2つのタイプの症例に大別する事ができる為なんだ。
2つの種類?
そう、2種類のタイプ。まずひとつはリンパ節腫脹が全身のリンパ節に見られる「多中心型キャッスルマン病」と呼ばれるタイプ。そしてもうひとつは、ひとつのリンパ節のみにリンパ節腫脹が確認される「限局型キャッスルマン病」と呼ばれるタイプ。今のところ発症割合は同程度と考えられているんだよ。
※多中心型と限局型の大きく2種類に分類できる
キャッスルマン病の基本的な治療方法として最も効果が高い治療方法は「リンパ節腫脹の除去手術」があげられる。
このリンパ節腫脹を確実に手術によって除去できるケースでは、症状も確実に改善する事が確認されているんだ。
但し、この除去手術が可能なケースは「限局型キャッスルマン病」の場合であって、多中心型キャッスルマン病患者の場合は、手術によって全てのリンパ節腫脹を除去する事はかなり困難であるのが実情。
尚、手術による治療が困難である多中心型キャッスルマン病の患者の治療法としては、基本的に「薬物療法」による治療が行われることになる。
薬物療法では、まず全身に炎症症状を発症している炎症を抑制する為の抗炎症剤を使用。抗炎症剤として使用される薬物としてはステロイドホルモン剤が主力。
ステロイドホルモン剤は、非常に有能な抗炎症作用をもち炎症の抑制効果としては高い効果が確認されているんだよ。
ステロイド剤ってなんだか怖いイメージがあるんだけどなぁ。
ステロイド剤が怖いイメージがあるのは「副作用症状」があるからだね。ステロイド剤は確かに副作用の危険性はぬぐえない問題点のひとつ。しかし、適切な場面で適量の使用であれば効果が高い分強い炎症を抑制できるのは大切なポイントとなるんだよ。
しかし、このステロイド療法の問題点は副作用以上に継続的にステロイド剤を使用し続けていくことが不可欠であるという点なんだ。
免疫抑制剤を使用する治療もあるけど、どれも根源的な治療としての効果はまだ未確認であるのが現状なんだよ。
じゃあ治療を続けていくことさえも難しいだね。
今はそうかもしれない。しかし、近年新しい治療法として「トシリズマブ」と呼ばれる成分を含むアクテムラと呼ばれる薬剤を使用する注目を集めている治療法も出てきているよ。
キャッスルマン病のメカニズムが早く医学で解明されるといいなぁ。ねぇドクター、症例が少ない病気ということは、やっぱりまだ明確な治療法ってないのかなぁ?
そうだね、ポンちゃんが思うとおり、キャッスルマン病の治療は症例が非常に少ない点から現在はまだ明確な医療方法が確立されていないのは事実なんだよ。
但し、キャッスルマン病の病態のひとつとして、アルブミン数値の低下という病態が確認されていて、このアルブミン値の低下は前項でも解説してきたインターロイキン6(IL-6)と呼ばれる成分の過剰産生が大きな要因となっている点は解明されつつある。
※病態としてインターロイキン6(IL-6)の過剰産生が見られる
じゃあ、このIL-6がたくさん生み出されるのを防ぐことってできないのかなぁ?
キャッスルマン病の症状を発症するひとつの要因として考えられるインターロイキン6(IL-6)の過剰生成。
この過剰生成を抑制する薬剤として効果を発揮する医薬品にアクテムラと呼ばれる製剤がある。
このアクテムラは厚生労働省がキャッスルマン病の治療薬として認可しているんだ。
このアクテムラの主成分であるトシリズマブはキャッスルマン病に大きく関与する「インターロイキン6」の過剰な生成を抑制する働きを持っている。
そのため、この難病の治療の一手段として期待されているんだよ。
アクテムラというお薬はキャッスルマン病の治療手段として期待されているんだね。
※キャッスルマン病の治療薬としてアクテムラが期待されている